Quest3/Lighthouse ベースの無線フルトラ環境に移行した
Valve Index くん、4 年間今までありがとう……。
あらすじ
ここ数ヶ月 Index の起動成功率が 3 割を切っており、先日ついに 10 回ほど再起動して一回も立ち上がらない日が来てしまいました。 あらかたケーブルの断線ではないかと思っていますが、これ以上 Index の HMD を延命するのに金をかけるのもな……という気持ちは拭えませんでした。
かねてより、次に Index の HMD が使えなくなったらいよいよ移行の時だなとは思っていたところです。 やっていくぞ!そう、Quest3 を使った無線環境への移行を!
使用機器
そこまで変なところはないと思います。
- HMD: Meta Quest 3
- 今回の主役。去年買って全く使っていなかった。
- 本当に死蔵されている 2 と違ってちゃんと活用される機会が来てよかったね。良かったか?
- 付属の Touch コントローラーは使用しません。Virtual Desktop の起動と一部 UI の操作だけならハンドトラッキングで十分。
- コントローラー: Index (Knuckles) コントローラー
- 続投。
- 数ヶ月前に予備を使い始めたばかりなので今回は長持ちしてくれるといいな。
- ちなみに左手のスティックのタッチセンサーはもう壊れています。
- トラッカー: Vive Tracker 3.0 x4
- 肘トラ用に 2 個追加で買ったうち 1 つを continuous calibration 用に転用します。
- Lighthouse ベースステーション: Index 付属 ステーション (2.0) x2
- まだピンピンしててすごい。赤ランプにならないでくれよ……。
環境構築
大部分は Valve IndexからMeta Quest3に移行した話 | おっとあかん | Otakan Blog を参考にしています。 おたかんありがとう。 Virtual Desktop, Space Calibrator (Steam 版), OVR Lighthouse Manager などのセットアップについてはこちら記事にてわかりやすく紹介されていますのでぜひどうぞ。
この記事ではもうちょっと変な話をします。
Quest3 用のマウントを印刷する
まず先に言っておくと、急ぎでない方はnoja工房さんのトラッカークイックリリースマウントを注文することをおすすめします。
僕は急ぎの方だったので、どうにかして安定してマウントさせる手段を 1 日以内に確保したかったんです。そこで 去年買った Bambu Lab A1 mini に活躍してもらいます。 ちょうど良く Printables で Quest 3 Vive Tracker/Tundra Tracker Mount というモデルが公開されていたため、ありがたくこれを利用させてもらいましょう。
Quest3 の上部中央に貼り付けたら完成です。これでトラッカーマウント問題は解決しました。
ドングルを自作して Index の HMD を撤去する
Knuckles コントローラーの使用には Vive Tracker のドングルに相当するチップ、より正確には SteamVR デバイス用の Watchman Dongle (Radio) を用意しなければなりません。 Index の HMD にはこれが 2 つ内蔵されているので追加のドングルは不要だったわけですが、撤去するにはなんとかしてこのチップを代替する必要があります。
汎用ドングルは既製品として何種類かリリースされていますが、構築当時はそのどれもが売り切れでした。 もちろん、Index をそこに置いておいて USB ケーブルと電源だけ繋げておけば当面はどうにかなりますが、あいにくトライデントケーブル1も断線しかかっておりいつ認識しなくなるかわかりません。
突然ですが、この Watchman Dongle には nRF52840 という Nordic 社製の SoC がよく使われています。 これを搭載したマイコンボードは秋月電子やスイッチサイエンス等でも取り扱いがあり、Raspi Pico や ESP32 シリーズほどではないにせよ比較的簡単に手に入れることができます。 代表的なものだと Seeed Studio XIAO nRF52840 Plus でしょうか。

Seeed Studio XIAO nRF52840 Plus。サイズは 500 円玉くらい
そう、これに Dongle のファームウェアを書き込んでドングルとして認識させてしまえばいいのです。 SteamVR のインストールファイルには Valve Index のファームウェアが含まれており、この中には上記ドングルとして動作する nRF52840 用のファームウェアも含まれています。 これを ugokutennp/watchman-uf2 で色々やると Watchman Radio として動作する XIAO nRF52840 Plus の完成です。 2 つ分で 4000 円弱で用意できたので上々ではないでしょうか。いらなくなったら普通にマイコンボードとして使えるしね。
周辺機器
バッテリーストラップ
長時間 VRChat をプレイする上では必需品となるバッテリー付きストラップ。
最初 Meta Quest Eliteストラップ バッテリー付き を買って数日使っていたんですが、どうにも後頭部のシリコン部の上部が頭皮に刺さって痛い。 取り付け角度を微調整したり締め付けを調整したりと試行錯誤しましたが、満足するセットアップではやはりこの痛みは避けられませんでした(なお kb10uy は Index 時代から割とキツめで被っていたことに留意が必要)。
というわけで別のストラップを探すことにします。必須要件としては後頭部がシリコンではなくクッションになっていることです。
各種記事や Twitter 上でのレビューを参考に、KIWI design K4 Boost に選定しました。額で固定するヘイロー式ではなく、上記 Elite ストラップと同じ後頭部と顔面で固定するタイプ。
概ね「あまり動かず長時間着けるなら同社の H4 Boost (こちらはヘイロー式)、フィット感・固定力なら K4 Boost」とのことなので、後者をポチりました。Amazon でタイムセールやってたのも背中を押された一因。
こちらは今のところ装着時の痛みもなく快適です。強いていえば首の左右振りに対する追従が Index や Elite ストラップよりわずかに緩やかですが、今のところこれはそこまで困っていないのでモーマンタイ。 あと H4/K4 Boost ともに本体側バッテリーとストラップ側バッテリーの同時充電に対応しているのが地味に嬉しいですね。3m ぐらいある USB-PD 100W 対応の C to C ケーブルがあると捗ると思います。
Wi-Fi AP
当初 Quest3 専用の AP を置かないと帯域・レイテンシー的に厳しいかな?と思っていたんですが、以前から使っていた ASUS RT-AX3000 が思った以上にパワフルでほとんど気になりませんでした。これは嬉しい誤算。
その他
セットアップに直接は関係ないけど遭遇した事象とかについて。
Virtual Desktop の仮想トラッカーを利用した肘トラ設定
Virtual Desktop から Quest3 側の姿勢推定データをトラッカーの位置情報として送る機能がありますね。あれを肘だけに使う話。 Virtual_Desktop_Body_Tracking_Configurator を利用して身体の各部位の仮想トラッカーの有効状態を切り替えられます。
少なくとも僕が試した範囲では、Left/Right Arm Upper Joint だけ有効にしておけば問題ないようです。 挙動を見る限り Lower Joint は拾われてない気がします。

Virtual_Desktop_Body_Tracking_Configurator の設定状態
Spout Stream 出力による VRChat 画面の録画
ここは RTX40 series 以降の人は気にしなくていいです。NVENC が 2 基載ってるからね。
うちでは RTX3090 を使っているのですが、 RTX30 series には NVENC が 1 基しか載っていません。 そしてプレイ中はその 1 基を Virtual Desktop がほぼ全てを食っているので、Spout Stream を OBS などで録画する場合適当に NVENC を使う設定にすると動画か VR 映像の少なくとも片方が悲惨なことになります。
解決策ですが、思い切って録画を CPU エンコードにしてしまいましょう。
映像ビットレート 12Mbps / エンコーダプリセット veryfast 程度に設定しておけば、VRChat が快適にプレイできる PC ならば 1080p60 程度のエンコードはおそらく余裕です。

OBS の設定状態
今後の展望
Tundra Tracker の 3 個セットを買って Quest3 と肘に配置できるようにしたいですね。あっちの方が小さいし。
それと専用のイヤホンも導入するか少し考えています。 スピーカーの品質については Index と比べられる方がかわいそうなのであんまり求めるのも酷なんですが、Quest3 標準スピーカーだとやや定位感が前方にずれているのが気になるので……。
-
PC と Index から伸びるケーブルを繋ぐ三叉になっているやつ。 ↩︎